連弾にしかない工程
11月23日ラフェット2024では、連弾の演目が二組あります。
ラフェットはもう何十回も開催していて、そのほとんどが同じ会場でした。
そこでは、ピアノを二台借りることができるので、二人組は皆さん普段めったに体験できない二台ピアノという演奏形態を選びます。
一般的にはピアノが一台だけのホールが圧倒的に多いので、今回を含めてこれまでに数回、別の会場を借りる時にはいつもは二台ピアノの組も“連弾”で出演します。
今回の二組のうちひと組は長年組んでいる二人で、クリスマスのライブの時に何回か連弾をしてきました。
もう一組の方は本当に二年に一回、「久しぶり」と言って出会って、二台ピアノを何ヶ月か一生懸命で練習して出演し、「また二年後に」という人たちで、連弾というのは今回初めてです。
今回はどちらの組も連弾になりましたが、連弾に慣れているかどうかいう点では、やはり差があります。
ですが慣れている方の組も少し苦戦しています。
クリスマスライブの方が気軽にできるからでしょう。
ラフェットというのは、やはり生徒さんにとってはかなり大きな規模の演奏会なので、それなりに大曲を選びますし、責任を感じてるのかもしれないですね。
一般的には連弾の方が、ピアノが一台あればできるわけですから、身近なものです。
環境という意味で機会が多い。
二台ピアノというのは滅多に体験できないからこそ、ラフェットで二台借りられるその会場の時には二台ピアノを選びます。
ですが、連弾には実はほかの演奏形態にはない苦労があります。
この連弾にしかない苦労ということが、その演奏形態をわざわざやる楽しみの大きなひとつ。
どんな苦労かというと、ソロピアノや二台ピアノやいろいろなアンサンブル演奏をする時に、 演奏を本番に向けて作り上げていく段階の工程が多いのです。
普通は、とても大雑把にいうと、譜読み、練習、仕上げという三段階。
その「練習」の段階がいくつかに分かれます。
まずそれぞれが自分のパートをレッスンを受けて練習し、その後に、二人で一緒に演奏する練習をします。
この時に、自分だけの時は自分のパートは完全に弾けていたはずが、一緒になるとまず一旦最初は弾けなくなるものなのです。
なぜかというと、 体がくっついたり押し合ったり重なり合ったり、指が重なりあったり譲り合ったり、いろいろと普段にはないことが起こるからです。
例えば、レガートで弾いてた部分で、相方の指がその同じ鍵盤をすぐ次の瞬間に弾かなければならない作りになっていたら、短く切って退かなければならない。
ひとりで弾いていた時には、優雅なレガートでしっかり表現して弾けていたのに、と言ったようなことが起こるのです。
また、手や腕が重なり合わなければならないことに気がついて、その腕の高さを互いに調節するという作業もあります。
次にもう一つ多い工程が、その「重なり練習」で二人で体をくっつけ合って演奏してる時には、ほかの演奏形態には絶対にない独特のドキドキがあるので、それを乗り越えるというものです。
ソロでもアンサンブルでも二台ピアノでも、物理的な空間は自分ひとり。
音が一緒になってアンサンブルになるのであって、人とぶつかったり重なったりということは連弾にしかありません。
とてもドキドキして他の形態では絶対に味わえない変な緊張感があり、それを乗り越えなければいけない工程が一つ加わるわけです。
そういう普通ないような状態に置かれても自分の100パーセントの演奏ができる、というふうに持っていくのに、少し時間が必要なのですね。
重なり練習をしてみて初めて「こんなふうに自分の演奏を変えていかないと二人の演奏にならないのだ」ということを発見して、自分を変えてゆく段階と、次のその独特のドキドキ感を乗り越える段階。
この二つ増えた行程の後に、普通の演奏形態と同じように仕上げをしてゆきます。
私も何人かの方と連弾をしたことがたくさんあるので、そのドキドキの気持ちはとてもわかります。
音楽の先生ですらそうだし、プロのピアニストでもソロで弾く時とは全然違うというふうに思っているはずです。
ですが、この連弾という形態では、ソロよりも二台ピアノよりもずっとオーケストレーションのおもしろさが増えているはずです。
ピアノ音楽のオーケストレーションについてを、noteやAmebaブログに書いたりYouTubeの番組で話したりしていて、ご好評いただいています。
ピアノ音楽をオーケストレーションするというのはとても大切なことで、楽しいことです。
その楽しみがと喜びが連弾の音楽には一番多いはずなのです。
この今回の二組は、今の段階での進捗状況から「こんなスケジュールじゃなかったはずなんだけど」「今頃もう少し先の方に進んで来れているはずだったのに」「予定と違うぞ」と感じているかなというふうに、レッスンをしていて思います。
ですが、楽しいなと思ってほしいです。
楽しいと思えるように、レッスンで引っ張っていってあげなければと思っています。
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