ラフェットのプログラムの決め方
二年に一度の生徒さんの演奏会、だいたいの演目が出揃いました。
この演奏会は古い音楽から順に演奏されてゆきます。
「音楽は時間の芸術」私の口癖です。
時間と共に流れてゆく音楽を、たくさん聴いていただく時には、時代の流れに沿って順番にというのが私は一番好きです。
時代順でもどちらかというと、古い作品から順に並んでいるコンサートがとても多い。
それがどうしてなのかというところが興味深いです。
聴き方ということもあると思うのです。
無心に楽しんで聴いているときに、古い順に徐々に新しくなってくる感じですと、とても心地良いことがある。
私が一番思うのは、作品が今の自分の生活や今の自分という人間から遠いところのものから始まって、 「こんな音楽もあったんだな、素敵だな」と、自分とかけ離れたものを味わい、それが一曲聴くごとに少しづつ今の自分に近づいてくるという流れは、心地良いということです。
もちろん、逆の魅力ということもあるでしょう。
一番現実に近い、想像力を働かせなくても聴くことができる身近な音楽から始まって、だんだんと時代が遡ってゆき、自分から遠いところに行く。
時の流れに逆行していくおもしろさというものも、もちろんあると思います。
それは自分から「遠ざかってゆく」のですよね。
どちらかというと、遠ざかるよりも近づいてくる方が、 すべて聴き終わったあとに、現実の自分に戻ることが無理なくできます。
何かひとつ大きな隔たりを超えて無理やり戻ってくるのではなく、自然に。
遠ざかるか近づくか、どちらも良いとは思います。
私は、遠くからだんだん近づいてくるふうに並べる方が好きですね。
この演奏会企画では毎回、まずはじめに縦軸が演奏順番、横軸が演奏形態という表を作ります。
そしてその各枠に、満遍なく曲目が書かれていくように、選曲を進めます。
部構成は①オープニング、②バロックとそれ以前の音楽、③古典派音楽、④ロマン派音楽、⑤リトミック発表の部、⑥ポピュラー音楽、⑦近代現代の音楽という順番です。
そしてそのどの部にも、ソロ演奏、2〜3人のアンサンブル、大人数でのアンサンブル、全員出演の演目の四種類があるように決めてゆきます。
生徒さんお一人お一人のご希望を、例えばソロ演奏をしたいか、以前から組んでいるデュオやトリオがどんな曲を演奏したいか、大人数のアンサンブルに入りたいかなどをじっくりと話し合ってお聞きします。
はっきりと曲目までご希望が決まっている場合もあります。
またはこの時代の音楽を演奏してみたい、この作曲家(ミュージシャン)の曲を何か演奏してみたい、というご希望もあります。
それらをなるべく叶えながら、でも部と形態の演目数が偏らないようにする。
とても難しいパズルです。
お一人お一人じっくりと向き合い、今のその人の演奏力や状況に無理なく決めなくてはなりません。
半年弱くらいかかる練習期間ずっと楽しいというお気持ちで過ごしていただきたい。
終わった時に「楽しかった!」という言葉が必ず聞けるようにするためです。
何曲出演しても良い演奏会ですので、全員で演奏する演目もいくつかあるためお一人が5〜10演目くらいの出演となります。
全員出演を除いたソロやアンサンブルの演目が、一つの部や続いた部にまとまってしまわないようにしなくてはなりません。
本当に毎回、至難の業です。
今回も無事になんとか、その表が9割埋まりました。
あとは、バロックの部のアンサンブルが出演者だけ決まって曲目が一つに絞れないでいるのと、リトミックの部の曲が決まらないのと、二台ピアノの二人組がひと組だけまだ出演するかどうかを決めてくださらないのと、それだけです。
すべて決まったら、ひとつひとつの演目についてその作品や作曲者(ミュージシャン)のことを出演者全員にじっくり解説するという楽しい講座を開きたいと思っています。
初めの方の古い音楽の演奏には、それに合わせた特別な楽器を使ったり、演奏方法も特殊です。
その点は古楽研究が趣味の私ならではのこだわりですので、そんなお話も今後ここに書いてゆけるはず。楽しみです。
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