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演奏会場の形

歌の生徒さんのレッスンをするときに、舞台に立ってお客様に向かって歌っていて、目線の角度がどれくらいかということを時々チェックします。

最近のレッスンはもちろん秋の演奏会ラフェットに向けてのレッスンがほとんどです。


歌の表現というのは、見つめる所と自分との距離感、角度によって、表現が決まる部分もあります。

表現だけではなくて、それらは発声の技術自体にも関わってきます。

距離感と目線の角度というのは何で決まるかというと、演奏会場の形です。

最後部座席のお客様に向かって歌うような目線の角度を、私は推奨しています。

もちろん、その一番後ろの席というのがとても高いところになってしまう場合はそうではなく、程よい角度に決めます。


ラフェットの会場は、そんなに広くありません。

これまでの何十回もやってきた中のほとんどを開催してきた会場は、だいたい270席くらい。

今回借りた会場はそこではなく200席弱くらいで、いつもよりも少し小さめです。

その一番後ろの客席がこれまでよりも少し低いところになりますので、目線の角度も少しだけ下がるというところをチェックしています。

声楽の生徒さんたちは皆さん素晴らしくて、これまでのほとんどのラフェットを開催してきたその270席の角度に、もう目線の癖がついていました。

それより少し今回は低いからね、ということでレッスンしています。



コンサート会場の形というのは本当にいろいろあって、私にとって一番気になるのは、舞台が客席の1列目よりも高いか、それとも客席の1列目と同じ高さかということです。

「もちろん客席の一列目よりは舞台の方が高いんじゃないの?」と思われる方がとても多いと思いますが、その方は大きなコンサートによく行かれる方だと思います。

最近は、舞台と同じ高さのところに1列目の客席があって、そこから2列目3列目と後ろに向かって上がっていくという形の会場が増えてきています。

もちろん、とても小さいサロン的な会場だと、椅子を主催者側のスタッフが並べる会場もありますので、そういうところは客席から1番後ろの席まで全部同じ高さですね。

そこまで小さくもなく、後ろに向かって客席が高くなっていっているけれども、1列目が舞台と同じ高さ、という会場。


そのような会場のすべてではないと思いますが、多くのそのタイプの会場は、客席を収納して全体を広い体育館のようなフラットなスペースにできる、というところも多いです。

そして、舞台としてライトが当たるのはここからというスペースと1列目の客席との間に、数メートルの隔たりがあって、1列目の客席の目の前がもうステージという感じではなく、すこしだけ距離がある会場。

そういうところですと、その数メートル幅のスペースの床が沈み込んで、その中から三列くらい客席が現れる、というところもあります。

その形で使うと、1番前の客席は舞台より低いということになりますね。

ラフェットの多くで使ってきたホールが、そのタイプです。

私はそれをしないで、1列目が舞台と同じ高さで、床下に隠れている三列は使いません。

毎回出演してる生徒さんたち、「え?あの会場ってそんなこともできたの?知らなかった!」という方もいらっしゃるかもしれませんね。



私はその1列目の客席と舞台が同じ高さというスペースがほんとに好きです。

演じてる人たちの足元まで全身が見える、床から天井までのすべての空間がすべてのお客様から見渡せるという環境で、前の列のお客様が舞台を下から見上げるようはならず、同じ目線または上から見下ろす感じ。

私は専門がダルクローズリトミックのプラスティクアニメ(身体表現音楽)の研究で、その研究会を何十年もやっていますが、その公演をいつもそういうところでやってきたからだと思います。


下から見上げるというのは、演奏を聴くだけならそれでもいいかもしれませんけれども、空間全部を使った表現のアートを観る場合には、やはり少し違うなと思ってしまいます。

私が四年に一回行くジュネーブの、リトミックの創始者ダルクローズ先生が作った学校にある、ダルクローズ先生が舞台美術家と共に考案された舞台が、一列目と舞台面が同じ高さです。

そこで何回も研究発表させていただいたという経験もあって、それとそっくりな環境の舞台が日本の私の活動エリアにあるので、そこでばかり公演していました。

ですから、自分が主催する生徒さんの演奏会も、やはりそういうところでやるのが好きなのです。

ラフェットの中には、そのプラスティクアニメの発表の部もほんの数曲ですがあります。


演奏会場の形というと、天井の高さ、壁の材質、反響板の有無など、いろいろなことが話題になりますが、 私が一番気になるのは、その客席の一列目が舞台と同じ高さですという部分なのです。






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