中世音楽のコンサート
音楽の歴史について、いろいろなところでよく語ります。
レッスンで皆さんが演奏したがる作品は、現代までの400数十年間のヨーロッパの音楽の変化を知っていると、より楽しく練習できて、仕上がりもより満足のいくものになるからです。
でもちょっと待って!? たったの400数十年間? 今は2024年なのに?
そう、どれも1600年以降(バロック時代以降)の作品なのです。
バロック時代の音楽だって、一番終わりのバッハはよく演奏されるけど、それまでの作曲家はそうでもありませんよね。
では更にその前は?
バロックの前はルネサンスという200年弱くらいの大切な時代がありました。
そしてその前が、なんと1000年間くらいの長〜い「中世(ちゅうせい)」という時代なのです。
(それよりも前はもう「古代」となります)
この中世という時代、長過ぎだと思いませんか?
ヴォアクレールレッスン生の皆さんは、郁先生からその点についてこれまで何度か話を聞いてきて、その長い時代の内容についてどんなことを思っていましたか?
1600年以降、1400年くらいから(ルネッサンスから)かもしれませんが、この頃からの音楽の変化については資料もたくさんあり、多く語られていて、演奏を聴いて楽しむ機会もいろいろあります。
でもこの長〜い中世という時代はどうなのでしょう。
私はこの時代にもいろいろなことが起こっていて、いろいろな変化を遂げていたのだと想像しています。
ですが、キリスト教がものすごい力で人間社会を支配していて、科学や人間そのものについての研究を進めることができない、という時代が長く続いたので、1400年くらい以降ほどの大きな変化ではないかもしれませんが。
その中世の音楽を研究して演奏している音楽家は、人口は少ないですがそれでも結構いるのです。
西洋音楽は、大きくキリスト教音楽と大衆音楽に分けて考えられます。
(グラデーションの部分の音楽もあるし、郁センセは実は、あまりはっきりくっきり分け過ぎるのは好きではありません)
どちらもいろいろな資料がありますが、音楽家たちのお勉強としてはキリスト教音楽が必須です。
その後のクラシック音楽の土台となっているからです。
ですから現代の大半の音楽家の間では、この中世の音楽についてはキリスト教音楽ばかりが語られます。
でも、実際のその時代の一般庶民の生活の中では、大衆音楽が大半だったはずですよね。
キリスト教音楽は、大雑把な言い方をすれば、歌が中心でした。
楽器というものはほとんどは大衆音楽に使われるものだったのです。
大衆音楽(要するに現代風にいうとポピュラー音楽)の方は、郁センセはずっと長年興味津々でした。
ですが聴いたり調べたりは断片的に、中途半端にしかやってきていません。
(自分の教えるというお仕事や演奏活動に絶対必要な方にばかり、時間を取られていたということです)
中途半端な知識なのにとっても心を惹かれていて、その関連の言葉を見ると大きく反応してしまいます。
CDばかりを聴いていたそんな方々のコンサートを、生で聴きに行きたいと思い続けていました。
それがこの冬やっと叶ったのです。
ふと目に入った中世の音楽を演奏するコンサートの宣伝。
使われる楽器の名前と、演奏予定プログラム、そして場所を見て、即座に行くことを決めました。
(場所が京都なのも即決の理由の一つです。
仏教のお経が歌のようになっている声明というものにとても興味を持っています。
平安時代と鎌倉時代の仏教で奏でられていて、その後の日本の音楽の土台となります。
西洋のキリスト教の聖歌と同じですね。
ですから、コンサートの翌日には、京都に行くと必ず訪れる大原、天台声明の発祥の地に、、という計画を立てました。)
とっても楽しいコンサートでした。
演目も演奏者も楽器も演出効果も、最高でした。
これをきっかけに今後はもっとたくさんのこのような古い音楽のコンサートに出かけ、中世音楽の演奏家達との交流を持ちたいと考えています。
『冬のアルティザン〜古楽器色のタピスリィ』
12月15日(日)午後
京都の街の北の方にある“ARS LOCUS(アーズローカス)”という交流施設の中のコンサートホール
Artisan Bruyant(アルティザン・ブリュイオン)
それぞれのシーンで活躍する三人の楽師が集まり、2014年結成。
楽器の個性と演者の個々のキャラクターを活かし融合させた、即興とアレンジ、ストーリー性のあるプログラムで中世の扉を開き、その場の人々を旅の道連れとする。
近藤治夫(こんどう はるお)
バグパイプ、ゲムスホルン、リコーダー、ハーディガーディ、クルムホルン、フルート、歌
Sally Lunn(サリー ラン)
中世二列弦ハープ、プサルテリウム、リコーダー、テイバーパイプ、クルムホルン、バグパイプ、ゲムスホルン、歌、語り
蔡怜雄(さい れお)
トンバク、ダフ、レク、ロングドラム、サントゥール、セタール、歌
プログラム
聖母マリアのカンティガ、モンセラートの朱い本、ダニエル物語、中世吟遊詩人の恋歌、イタリアトレチェントの器楽曲、他12~14世紀の中世ヨーロッパ古楽
コメント